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以下、2015年初夢の一部をそのままに。

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ある所に、怪物がいました。


怪物は相棒と一緒にいるのが日課でした。


ある日、怪物は4匹の人間の子供を見つけました。
「おやおや、ディッケィファンストの子供だ」
どこからか紛れ込んできたらしい。別の世界から来たらしい。

ディッケィファンストとは怪物たちの所で『人間』という意味でした。
語源はわかりません。何語なのかもわかりません。
でも怪物たちは人間達を『ディッケィファンスト』と呼びました。

震える4匹の子供達を見て、怪物は相棒に提案しました。
「この子供を飼おうじゃないか」
相棒もその意見に賛成し、
怪物と相棒は4匹を近くの洞窟に連れていきました。




そして怪物は子供達をそれぞれ
1、2、3、4と数字で呼ぶことにしました。


1は、果敢そうな顔つきの少年でした。
2は、おどおどして隠れてばかりの少年でした。

3は、他人と距離を置きたがる少女でした。

4は、信心深くて常にお祈りをする少女でした。



相棒に『子供達を飼おう』と言ったものの、
実は怪物に人間を愛でる趣味なんてありませんでした。


怪物にとっての『飼う』とは
『生け簀(いけす)に入れる』という意味です。


一気に4匹も食べてしまうのは勿体無い。
どこか逃げられない場所に生きたまま保管して、
食べたくなったら1人ずつ食べてしまおう。

デザートを冷蔵庫に入れておいて
新鮮なままとっておけるようにしよう、という感覚です。





洞窟の中に4匹は放たれました。

果敢そうな顔つきの1はどこかを睨みつけるように座り、
そんな1の背中に2が隠れ、

怪物とも子供達とも均等に距離を置いた場所に3が腰かけ、

開けた場所に座った4はひたすらお祈りをしていました。


そんな姿を怪物と相棒はジロジロと見ていました。


一番初めに動いたのは1でした。
どこかを睨みつけるようにしていた顔からは
大量の汗が流れていました。

大量の汗をそのままにして立ちあがった1は、
後ろに隠れていた2の服を掴みました。

そして、怪物に2を差し出したのです。

1の言葉は小さく震えていたので聞き取れませんでしたが、
どうやら
「俺達を食べるなら2を一番初めに食べてくれ」
ということらしいのです。




1は果敢そうな顔つきの割にかなりの臆病者だったようです。


1につき出された2は慌てました。

必死に逃げようとする
2を怪物は軽々持ちあげ、
ひと口で飲んでしまいました。



味や感触はわかりません。
ただ『食べてしまった』という事実が残りました。

2を食べるだけでは物足りなかったようで、
怪物は勢いで1も食べてしまいました。


  

それを見ていた3は立ちあがりました。
自分も食べられるのは嫌だと思ったのでしょう。

3は洞窟の奥に向かって走りました。
するとその先には窓がありました。
一般家庭についているような、ごく普通の窓です。

その窓を開けてみると外が見えました。
3は窓に足をかけて外に向かってジャンプしました。

が、

着地地点に怪物が大きな口を開けて待っていました。
怪物は3の行く先に目星をつけて先回りしていたのです。

ジャンプしてしまった3は逃げる事も出来ず、
叫び声をあげながら
怪物の口の中へ一直線に入っていきました。




さて、
残ったのは祈り続ける少女4だけです。
相棒はそれをジッと見ていました。


そんな相棒の元へ、満足そうな顔をした怪物が帰ってきました。

「ディッケィファンストはかなり美味かったぞ」
怪物は相棒に耳打ちします。
「最後の一匹はお前にやるよ、食べてみろよ」


しかし相棒は4を食べません。
どうやら相棒は4を気に入ってしまったらしいのです。

相棒は小さな声で4といくつかの言葉を交わしました。

なんだか微笑ましいなぁと思いながら、
怪物はその様子を眺めていました。




それから、相棒と4はそれなりに仲良くしていたようです。


しかしある日、相棒と4は口論になりました。
それまで大人しかった4が怒っているような、泣いているような様子です。

相棒は口論になってしまった勢いで4を食べてしまいました。
ゴリゴリと音を立てて、噛みしめるように、長い時間をかけてじっくりと食べていました。
優しく、味わうように。 飴玉を口の中で転がすように。

その様子を見た怪物は、相棒が恋をしていた事に気がつきました。



ゴクンと喉を鳴らした相棒は、怪物に言いました。


「これは服(かわ)を剥いて、醤油をつけたらもっと美味いと思う」


その言葉はすごくアッサリとしていました。


その言葉を聞いた怪物は相棒の肩を叩くと
「ゲーセン行こうぜ」と言って田舎のゲームセンターに向かって歩いていくのでした。(?)
彼らのオススメゲームはピンボールらしいです。



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…という一連の流れを見ている2015年の初夢でした。
ラストはカオスです。 あいつら、地元のゲーセンに行ってました。
ピンボールなんて今時、寂れた田舎旅館ですら珍しいでしょうに。
(夢に出てきたのは実物の盤の方です。ケータイゲームじゃなくて、直接遊ぶ方です。)

デザイン的には相棒の方が怪物らしく、怪物の方が相棒らしい姿ですね。

洞窟の中のデザインも「洞窟」というよりも内装は「教室」って感じでした。



この夢の中に出てきた「相棒」と「少女4」のお話が
今回の短編漫画『ディッケィファンストは一輪の花』になりました。

タイトルでも使われいている単語『ディッケィファンスト』は何語でもありません。
今思い返せば、『ディッケンファウスト』の方が近い発音だったかもしれません。
夢の中で出てきた用語なので意味も全くありません。

漫画の方では怪物の代わりに動物たちが出てきて優しい雰囲気になっていたり、
補足説明が増えたりなどの大幅な改変が行われています。

寝てる時の私の原案を、起きている時の私が沢山改変しました。



ちなみに私自身は夢の中のどこにいたのかというと、



洞窟の中の石になっていました。


それでは、長々とした短編にお付き合いくださりありがとうございました。


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